遠近法【一点透視・二点透視・三点透視】の基礎知識のまとめとポイント
こんにちわ!大阪でクリエイターをしています、藤原ななえ(@fujiwara_nanae)です!
この記事の内容は、フィリピンと日本を行き来しながらフリーでカメラマン及びライター活動をされている「スミレさん(@sumire.nz)」にご提供いただきました!経験知識ともに豊富な現役カメラマンからの生のアドバイスですので、趣味で行う動画撮影などにも気軽に取り入れてみてくださいね。
今回ご紹介するのは、より魅力的な映像を撮影するための遠近法についてです。どなたにでもすぐに実践していただけるよう、できる限り丁寧にわかりやすく解説していきますので、ぜひじっくり読んでみてくださいね。この記事の目次はこちら!
はじめに
平面である動画で立体感を演出できれば、動画のレベルを大幅に上げられます。奥行きのある動画には多くの人を魅了する力があります。では、どうやって立体感のある動画を撮影できるのか?知りたくなりますね!この記事では、立体感のある動画を撮影する方法である遠近法と、遠近法の一つである透視図法を使った撮影方法を詳しく紹介したいと思います。基本を理解すれば難しいテクニックではありませんので、ぜひチャレンジしてくださいね!
奥行きを表現する遠近法(パース)とは?
遠近法は別名「パース」と呼ばれており、パースは「パースペクティブ(=Perspective)」の略称です。遠近感とは簡単に説明すると、近くのものが近くに、遠くのものが遠くにあるように見えるということ。そして遠近法とは、絵画(写真)において目で見えるのと同じように描画(撮影)する方法のことです。
私たちは立体の世界で生活をしているので通常は特に意識する必要はありませんが、動画・写真・イラスト・絵画・アニメなど物体として平面なものに奥行きを表現するには、遠近法を用いる必要があるということです。今回紹介する透視図法は、この遠近法の中の一つで最もよく使われているものです。
遠近感のある画像の魅力
平面で見るものに遠近感を加えるためにあるのが遠近法ですが、なぜ人は遠近感がある画像に魅力を感じるのでしょうか?その答えは、遠近感のある画像は「見る人の視線を誘導できる」からです。遠近感のある画像を見た視聴者は、画像の手前から遠くの方向に視線を誘導されることにより、無意識に状況を想像したくなります。そのため、人の視線を集める画像の多くで遠近法が使われているのです。
例えばソファに座っている人を撮影する時に、すぐ後ろが壁であれば遠近感の感じられない映像です。その画像が悪い画像とは言いませんが、もしソファの背景にオブジェや本棚などがあれば奥行きのある画像になりますね。
奥行きを感じる画像の方が印象的になりますし、なんとなく「プロっぽい」イメージが感じられます。そして背景にあるものを見て、視聴者は多くのことを想像します。「インテリアにも凝っているんだな」「サーフボードが置いてあるから趣味でやっているのかな」「たくさん本あるから読書をよくする人なんだな」などです。視聴者に興味を持ってもらえれば、それだけで十分な成果と言えますよね!
透視図法の基礎知識と種類
ここでは、初心者にも使いやすく奥が深い遠近法としての「透視図法」についての説明をさせていただきます。透視図法には「一点透視」「二点透視」「三点透視」の3種類があります。それぞれ遠くのものほど小さいく見える遠近法の基本を利用しており、より遠くにある点を「消失点」と呼びます。そしてこの消失点は、一点透視であれば1つ、二点透視であれば2つ、三点透視では3つあることになります。
消失点とは、実物では並行の線を遠近法において平行にならないように描画(撮影)することで最終的に交わる点のことで、理論的には「無限遠点(=限りなく遠い所にある点)」です。
消失点を基準として空間の奥行きを表現することで、視聴者に遠近感が分かりやすくなるのです。ちなみに、その消失点は必ず画面の中に入っていなくてはいけないわけではありません。それぞれの透視図法に特徴がありますので、一つずつ紹介しましょう。
一点透視
一点透視は消失点が1つです。全てのものがその消失点に集まっていくような構図です。対象物の横の線は水平・縦の線は垂直になっているのが特徴で、最も使いやすく効果的に奥行きが表現できるでしょう。
例をあげるのなら水平線に消えていくかのような真っ直ぐに続く線路を想像してみてください。線路は遠くに行けば行くほど幅が狭まり先細りしていきますね。その線路の先端の地平線に交わる部分が消失点です。
一点透視での撮影が効果的なシチュエーション
遠近感を強調することでより引き込まれるようなイメージを演出できるため、線路・トンネル・廊下・橋などの奥行きのある場所での撮影に向いていますし、電車などの長い被写体を撮影すれば迫力のある仕上がりが期待できますよ!
まっすぐ続いたトンネルの一番奥に消失点のあるような画像は、立体感だけでなく「この先はどうなっているのか?」と見る人の興味を引くようなストーリー性のある画像として撮影することもできると言えますね。
二点透視
二点透視は消失点が2つあります。縦の線が全て水平線に対して垂直だという特徴があり、漫画の背景などでよく使われ、建物を立体的に見せる効果があります。
この撮影方法は、消失点の片方または両方が画面外にあることが多いため、一点透視に比べて見極めにくいと感じる人もいるようです。逆に言えば、ほどよい立体感を感じる自然な遠近法とも言えますね。
二点透視での撮影が効果的なシチュエーション
奥行きのある建物の外観を撮影すればダイナミックな雰囲気になり、室内の内装を撮影すると室内の広さ強く感じられる画像になります。
三点透視
三点透視は消失点が3つです。二点透視に縦方向(上下)を含めたものが三点透視になり、下から撮影対象を見上げるような画像が分かりやすいですね。
また、その逆に建物の屋上から地上を見下すような画像も三点透視で撮影できます。3つの透視図法の中でも特に迫力のある印象の画像が撮影できると言われています。被写体をより高く大きく強調した表現ができますね!
三点透視での撮影が効果的なシチュエーション
都会のビル郡を見上げたり見下げたりするのに効果的な方法で、無意識に建造物を撮影すると三点透視になっていることが多いようです。
「一点透視・二点透視・三点透視」以外の遠近法
透視図法の他にも動画で使用可能な遠近法がいくつもあります。中でも代表的な「重畳遠近法」と「消失遠近法」をここでは紹介したいと思います。
ここで藤原から一言だけ!本来「遠近法」とは、人の目で見る3次元の空間を2次元である平面に描画する際、空間的関係性を損なうことなく表現するための手法です。つまり、一から描き上げていく絵画や図面とは違って写真や動画は、撮影した時点である意味で「立体」に見えますが、より魅力的に見せるためには遠近法を正しく理解して撮影で応用することが重要と言うことですね!
重畳遠近法
画像内の物体を手前と奥に置いて重ねることで遠近感を強調できるという手法です。考えてみると普通のことなのですが、奥行きのある画像作りに有効です。
例えば手前に花があって背景に人が座っている画像と、ただ人が座っているだけの画像なら手前に花がある画像の方が奥行きを感じられるでしょう。
消失遠近法
人間の目は、どこかに焦点を合わせると他のものがぼやけて見える仕組みになっており、カメラでも絞りを使用してボケが再現可能です。手前の被写体をメインとするのならピントを手前の被写体に合わせ、背景をぼかせば遠近感を強調できますね。
その逆に、手前にあるものをぼかし後ろにある被写体にピントを合わせて奥行きを表現する「前ボケ」という手法もあります。
画像のぼかし(=被写体深度)については、こちらの記事の中で詳しく解説しています。またホワイトバランスについても解説していますので、興味のある方はぜひ!
遠近法を使う時のポイントと注意点
さっそく遠近法で撮影をしてみようと思っても、何を撮影すれば良いのか分かりませんよね。特に透視図法は撮影時のシチュエーションによって何点透視を使用できるかが変わるので、難しく感じてしまうかもしれません。ここでは、遠近法マスターするために押さえておくべきポイントをお伝えしたいと思います。
遠近法で撮影された写真や動画を真似する
動画だと静止させなくてはじっくり画像を見られないため、練習には静止画である写真がオススメなのです。無料画像サイトなどを活用して、いくつもの奥行きを感じる画像を研究してみましょう。
そして自分の動画に使えそうな画像や気に入った画像を見つけたら、その画像の真似をして撮影してみましょう。もちろん全く同じように撮影することは不可能ですが、同じ構図を再現することはできますね!この練習を繰り返せば、撮影する場所が変わっても遠近法を使いこなせるようになります。
それぞれ画像を見たときに「これは何点透視なんだろう?」と考えてみる癖をつけるのも良いですね。分かりにくければ定規をパソコンの画面にあてて、消失点を探してみると見つかりやすいですよ!
線のある場所で撮影する
何も線がない撮影は見る側も遠近法がつかみにくいです。遠近感を強調させたいのであれば、線を意識した撮影スポットを探しましょう。直線なら塀・線路・廊下・建物などが使いやすく、曲線なら川やカーブのある道路などもお勧めです。線があることで遠近法を意識しながら撮影ができます。
画面いっぱいに被写体を入れない
例えばある建物を撮影する時に、その建物だけを画面いっぱいに撮影したくなってしまうものですが、あえて空間に余裕をもたせます。その空間にカメラマンから見て被写体の建物とは違う距離にあるものを入れましょう。例えば建物の手前にある街灯や建物の奥にある街路樹などですね。それだけで奥行きを感じやすくなるでしょう。
ぼかしたくない場合は絞りに気をつける
先ほど画像の背景をぼかすことで遠近感を強調する消失遠近法を説明しましたが、背景をぼかしたくない場合もありますよね?奥行きがある画像の背景までピントを合わせたい時には絞りの調整に気をつける必要があります。
広角レンズを使って遠近法をより生かした撮影を!
遠近法の説明をしましたが、この効果をより感じられるのが広角レンズを使用した時です。広角レンズの特性とメリットデメリットについて紹介しましょう!
広角レンズの特性(メリット)
広角レンズの特性のうち、メリットについてまとめました。
撮影できる範囲が広い
広角レンズは広い範囲を撮影できるという特徴を持っています。室内を撮影すれば実際よりも広く感じさせることが可能ですし、景色を撮影すれば他のレンズよりも臨場感のある画像を表現できます。
遠近感が強調される
広角レンズの一番の魅力と言える「引き込まれるような遠近感がある画像」は、先ほど説明したように撮影できる範囲が広いから可能なことです。大きな範囲が写せるので近くのものをより小さく、遠くのものをより大きく見せられるということです。
ピントが合う範囲が広い
広角レンズが風景に適している理由の一つとして、ピントが合う範囲が広いということがあります。隅から隅までピシッとピントが合った力強い画像が設撮影できますね!
広角レンズの特性(デメリット)
上記のように、多くのメリットがある広角レンズですが撮影するシチュエーションによってはデメリットも存在します。しかし、デメリットを理解しておけば対応できるものばかりなので、事前に把握してしまいましょう!
余計なものが写り込んでしまう
広い範囲が撮影できるために、画像に写し込みたくないものまで入ってしまうことがあります。例えば美しい景色だけを撮影したいのに、看板が入ってしまったりするなどの失敗に注意しましょう。
不自然なゆがみが出る
遠近感を強調できるのは広角レンズの特徴ですが、その歪みが不自然に表れてしまうケースがあります。直線でなくてはいけない建物の壁などが湾曲して見える状態ですね。
特に人を構図の端に配置してしまうと、横に伸びてしまう失敗が多いので、撮影する時には人物の立ち位置を中央に近いようにするなどの工夫が必要です。
こちらの記事では、広角レンズの特性を理解した上で歪みを抑える撮影テクニックやコツについて紹介していますので、ぜひ併せて読んでみてくださいね。
まとめ
遠近法について特に透視図法に着眼して、ポイントや注意点を説明いたしました。奥行きがあり遠近感の感じられる画像は視聴者の目を引きつけ、動画のレベルを簡単に上げることが可能です。今回お伝えした透視図法は特に使いこなしやすく、効果的に遠近感を演出できますので、ぜひチャレンジしてくださいね!
いかがだったでしょうか?この記事を気に入っていただけたら、コメントやシェアをしていただけるととても励みになります!これからも動画編集が楽しくなるような情報をどんどん発信していきますので、たまにサイトをチェックしてみてくださいませ。では、またべつの記事でお会いしましょう!
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